先日、かつての上司から、封筒が届きました。開くと、それは1冊の社史。
一冊の社史に込められた思い
元上司が社長を3年間務められ、先日退任された会社の社史でした。
発刊の挨拶では、赴任中にたくさんのイベントを実施したことを振り返り、「イベントの記憶だけでなく、記録を残したいと考えて『社史編纂』にたどりつきました」と主旨を紹介。「過去を大事にすることが未来を大事にすることにつながるでしょう」と意義を述べられていました。
私は編集者として、社史の編集も手がけており、その制作の大変さと意義は重々承知しています。元上司のお仕事のまとめが、
社史編纂
であったことが嬉しく、大変興味深く読ませていただきました。
社史をつくるメリットいろいろ
私が社史の編集に初めて携わったのは、前職・青青編集に入社したてのころのことです。
「社史」というと、
「誰も読まない」
「役に立たない」
などとおっしゃる方もいらっしゃいますが、私は企業にとって、とても役に立つものだと考えています。社史の役割について、師と仰ぐ社史編集者から以下の6項目を教わりました。
※解説はワタクシの解釈、経験によるものです。
1、歴史を記録する
そのまんまですが、これは非常に大切なことです。
過去にあったこと、存在した人は、記されて初めて「歴史上の事実」となるんですよね。
卑弥呼だって、中国の歴史書『三国志』のなかの『魏書東夷伝倭人条』(魏志倭人伝)に「書かれていた」から、今も私たちが知るところとなっています。
「歴史」は、企業にとって、お金を出しても買えない財産です。以下のような活用ができるので、しっかり残しておくべきだと私は考えています。
2、社会的役割を明らかにする
地域への貢献、技術革新への貢献など、社会的な役割をじっくり解説することができます。企業のイメージアップにつながりますね。
3、存在意義と独自性を確認する
歴史や社会的役割を明らかにすることで、存在意義や独自性を確認することができます。これは、社内に「誇り」を、社外に「信頼」を醸成することにつながります。「独自性」を際立たせることは、自社のブランドづくりにも役立ちます。
4、先達を顕彰する
「顕彰」というのは、「隠れているよいことを、明らかにあらわすこと」です。NHKで放送されたドキュメンタリー番組「プロジェクトX」を思い出してください。無名でも偉大な功績を残した人々はたくさんいらっしゃいます。そうした先人の苦労や困難を乗り越えた物語は、後輩たちの励みになります。
企業の独自性を物語で伝える「ストーリーブランディング」の観点からも、顕彰の価値はあります。
5、対外的なPRを図る
1~4のようなたくさんの情報を盛り込むには、チラシやパンフレットよりも冊子がむいています。
WEBサイトでも見てもらうことはできますが、冊子がよりオススメな理由には、地域の図書館や国会図書館に寄贈することで、地域史・業界史の資料として役立ててもらえる、永久保存してもらえる点があります。
6、資料の収集・整備を図る
やるべきだと分かっていても、資料や写真を集めたり整理したりするなんて、社史でも作らないとなかなか手をつけないものです。社史づくりには、貴重な資料の散逸を防ぎ、見やすい方法で公開できるという効果もあります。
また、社史を作る過程でスタッフ同士の交流が深まり、組織が活性化したといった効果もよく伺いました。
大変だけど面白い社史づくり
今回届いた社史の内容は、歴代社長の寄稿や大正時代からこれまでの歴史、イベントの記録、スタッフの皆さんの未来予想、新聞記事や社内報などの資料集と盛りだくさん。なかでも、社長の3年間の改革をまとめたページは、赤裸々で具体的で、
「こんなに書いて大丈夫?」
と心配になるくらい面白く読ませていただきました。原稿づくりや資料収集、校閲や校正は本当にたくさんの時間と手間がかかったものと拝察します。
とても手間暇のかかるのが社史づくりですが、これまでの経験上、経営者の方も実質的な作業をなさる事務方の皆さまも、社史が完成したときには、口をそろえて
「やってよかった」
「面白かった」
とおっしゃいます。
今回の社史でも、編集後記の編纂委員の方々のコメントが印象的でした。
「委員として、これまで積み重ねてきた歴史をまるかじりで感じることができたことに感謝いたします」
「会社の歴史を知ると数々の苦難を乗り越えて築いてきたものであり、会社が存続するとはこういうことなのだと改めて感じました」
「一から社史を作成する大変さを間近で感じたからこそ、この一冊の重みを知り、宝物にしたいと思いました」
「(編纂委員会活動は)毎回、笑いが絶えなくて本当に楽しかったです」
「未来に希望を感じられる一冊で有り続けてほしいです」
などなど、充実したご様子が伺えました。
本当に素晴らしい社史だと思います。改めて、発刊おめでとうございます。
あなたの会社でも、ぜひ社史づくりに取り組んではいかがでしょうか。手間も時間も費用もかかりますが、その甲斐は確実にあります。
メルマガ登録はこちらから
ここだけに掲載している林原りかの「自分史的自己紹介」をお届け後、言葉やブランディングで、ビジネスと人生を充実させるヒントをお伝えしています。返信もOK!
コメント