先日、テレビで料理研究家の小林カツ代さんが紹介されていました。
小林カツ代さんといえば「家庭料理」研究家。数年前におしまれつつ亡くなりましたが、今もレシピの人気は高く、新刊が発行されているそうです。
そんなカツ代さんは生前、出典は失念しましたが、「中華、フレンチ、和食と対等に、家庭料理というジャンルがある」といった意味合いのことをおっしゃっていたことを記憶しています。家族のために作る家庭料理は、シェフの作る「本格的」な料理に劣るものではない、という信念をお持ちだったのだと思います。
子供のころは、「ドラえもんのような声をした賑やかなおばさん」というイメージでした。
なんだか簡単そうなレシピが多く、人気の料理対決番組「料理の鉄人」で陳建一さんを破ったときにも、品数の多さには驚いたものの「こんなに簡単な普通の家庭料理がそれほど美味しいのかしら」と正直なところヤラセ疑惑を抱いておりました。
その小林カツ代さんへのイメージがガラリと変わったのが、小林カツ代の忙しいからできる!料理とおやつ (講談社プラスアルファ文庫)
という料理エッセイを読んだ時です。
カツ代さんの料理レシピの本はたくさん出されていますが、カツ代さんの書籍の魅力は、語り口そのままの文章にもあります。
この本では、カツ代さんが料理研究家として忙しくなりだしたころのお子さんとのやりとりや、家族のために作った料理のこと、家族が眠った後ほんのすこしだけの自分時間の楽しみ方などが、軽快なエッセイとともに紹介されています。だいぶ以前に別のタイトルで発刊されたものに、加筆・改題した内容です。
「忙しいからできる!」のタイトルのとおり、当時のカツ代さんは、お風呂で度々眠ってしまうほどの多忙と疲労ぶり。ですが、限られた時間の中で、楽しく美味しい料理を手早く作って、子供たちの喝采を得るのです。
私も当時は、4歳、2歳の子供を持ちながらフルタイム勤務。本のなかに出てきた「出かける時間がないなら、家のなかで敷物を広げてピクニック」といったアイディアは、おおいに参考になりました。子供たち、大喜び!
なかでも、私が好きだったのは、カツ代さんの母親が作るケーキに対する考え方です。
カツ代さんのなかのイメージは、昔のアメリカのホームドラマ。子供たちとおしゃべりをしながら、お母さんがボウルを泡立器でかき混ぜて、そのうちオーブンからいい匂い。切り分けてパクパク食べる……といった、気取らないものであるべきだという持論です。
手間暇かけた複雑な工程や繊細なデコレーションのお菓子は、ケーキ職人にお任せすればよいと考えていた私は激しく共感。この項で紹介されていた材料を順に交ぜて焼くだけ(おまけにバターは溶かしてから加えるので時短)のバナナケーキは、何度も何度も作りました。
今ではこのバナナケーキのほか、栗原はるみさんのレシピをベースにした「キャロットケーキ」と藤野真紀子さんのレシピをベースにした「チョコレートブラウニー」のみっつが、我が家の焼きっぱなしの定番ケーキになっています。どのケーキも、カツ代さんのいうとおり、子供とおしゃべりしながらタネを交ぜて焼くようなお菓子です。
この本を読んでいると、「仕事で忙しいことそのものは、子育てにとって決して悪いことではない」とつくづく感じます。カツ代さん自身がきっと、この時代を充実して幸せだったと感じていらしたんでしょうね。明るく慈しむような文章に、読んだ当時に子育てと仕事でバタバタだった私も、気持ちがすっと楽になりました。
忙しいなかでも、家族に美味しく、楽しく食べてもらおうという気持ちを持っていることは、家族に伝わります。
もちろん、手早く美味しいものをつくるためには、気持ちだけではなく、美味しいものが作れるだけの料理技術や理論を身に着けておくことも、もちろん大切。それを子供たちに教えながら楽しむことが大切。そんなことも感じさせてくれる1冊です。
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