草津温泉に学ぶマーケティングとブランディング。長期的視点で考えた戦略を地道に実践していこう!

先日、草津温泉で1泊してきました。人生2回目の草津温泉は、前回同様にとても楽しかった!

目次

日本一温泉地と評価

草津温泉は、群馬県にある温泉地です。源頼朝が掘ったという伝わる長い歴史を誇ります。

人気の温泉地であることは知っていましたが、「にっぽんの温泉100選(観光経済新聞社)」で20年以上連続1位という客観的評価でも、人気ぶりが証明されています。

「にっぽんの温泉100選」では、以下の観点で、高評価の温泉地を教えてくださいと質問しているそうです。

(1)雰囲気 (2)見所・レジャー&体験 (3)泉質 (4)郷土料理・ご当地グルメ

……一般的に温泉地に求めるもの、すべてですね。

ちなみに草津温泉の観光客は、2023年度に370万1300人で過去最高、前年比17.2%増という素晴らしい状況です。

「●●なら△△」がブランディング

今回、私は高校生の娘と草津を訪れました。

温泉地はほかにももちろんありますが、娘が「温泉に行きたい」と言ったとき、「娘だったら、草津温泉が好きそう」とすぐに草津温泉が思い浮かびました。

娘が湯畑を見て「すごーい!」感動して、湯もみショーで「へえ」と感心して、源泉かけ流しのお風呂で「気持ちいい~」とうっとりし、お宿で地場食材のご飯を楽しんだり、湯畑周りで食べ歩きする様子が、ありありと思い浮かびました。

ちなみにこの「●●だったら△△」と連想してもらえることが、「ブランディング」の目指す状態です。

思い出してもらえないと、訪れたり、買ってもらったりできませんからね!

アクセスは悪い草津温泉

ちなみに、草津温泉は関東に位置するとはいえ、アクセスしやすいとは決して言えません。

高速道路も新幹線も、草津を避けるように通っています。

今回は高崎にも用事があったため高崎から向かったところ、「こんな山奥に、本当にあの(Instagramとかで見た賑やかな)草津温泉があるの?」と娘も半信半疑でした。

立地のよい温泉地はほかにもあります。例えば、同じように温泉やスキーをウリにしている新潟県の越後湯沢温泉は、草津温泉からそう遠くないところにあります。

おまけに、上野駅から新幹線で1時間半というアクセスの良さです。関越自動車道には湯沢ICもあります。

しかし、「にっぽんの温泉100選」の10位にも入らないのですよね。※越後湯沢をディする意図はございません。日本の温泉地はどこも大変だということです。

マーケティングに基づく街づくりとブランディング

なぜ、草津温泉がこれほど連想してもらえるのか。多くの人が訪れるのか。マーケティングやブランディングの戦略が気になるところです。

草津温泉は長い歴史がありますが、全国の温泉地同様、昭和の後期から平成のバブル期にはスキーブームやリゾート開発の波がやってきたそう。

このころ「再開発」として、1968年で熱乃湯の湯もみショーがスタート。

1975年には岡本太郎の設計により湯畑が再整備され、渋滞が多かった温泉中心部が街歩きしやすくなりました。

ひょうたん型の湯畑から滝のように流れ落ちるデザインとその周りに人々が集う様子は、イタリアのトレビの泉のよう……と大好きでしたが、岡本太郎デザインだったのですね!

リゾートマンション開発による環境悪化を早くから懸念した草津町は、リゾート開発を規制したほか、バブル崩壊(1991~)後には、女性をターゲットにしたマーケティングの必要性に気づいたことから女将の会を作り、女性が楽しめる温泉地へという方向性が定まり始めました。

確かに、草津にはいわゆる「歓楽街」がないためか客層がよく、女性や子供が安心して街歩きできる雰囲気がありますよね。※ネットを検索すると各宿内のクローズドな空間で、エロなお楽しみをされる方もいるようですが、エロ主眼なら便がよくサービスの多い温泉地を選ばれることでしょう。

また、減少するスキー客の代わりとなる冬の誘客のため、2001年「草津の冬を考える会」が発足。

自然湧出日本一で源泉掛け流しが普通という温泉そのものが最大のウリだということを再認識し、「泉質主義」が打ち出されました。

草津温泉の夜の楽しみ、湯畑のライトアップも同年に始まりました。湯畑ではなく湯気を照らすことで、見飽きないようにするなど工夫されているそうです。夜でも楽しめ、冬はいっそう美しいという評判で冬も観光客が多く訪れます。

「裏草津」エリアを整備するなど、街歩きの楽しみが増えています。私たちも「顔湯」目当てに散策を愉しみました。

源泉の湧き出る様子も見られるようになっていて、ぼーーーーつ眺めていると癒し効果を感じます。

また、街歩きをしていて感じるのは、建物の素敵さ! 新旧の建物が街並みとして調和しています。

例えば、江戸文化年間創業で草津温泉唯一の登録有形文化財の宿・草津山本館。 

1877(明治10)年の創業で、館内すべて畳敷きの木造建築・奈良屋

スタイリッシュに湯治を楽しめる素泊まり専門宿・源泉一乃湯

湯畑の真ん前・隈研吾デザインの1室のみの宿・草津温泉 きむらや 。

などなど、建築物としても魅力的な新旧さまざまなお宿が並びます。ホームページも整っていて、情報もしっかり発信されています。

いつ訪れても新しい発見がある温泉地

草津温泉の次々と変化していく様子は、いつ行っても新しいアトラクションやエリアが新鮮なディズニーランドと同じような楽しみ方をもたらしてくれます。

草津温泉は坂が多い街並みを歩くためか、20~30代の若者が多い若い印象です。

一度楽しみを知った若者たちが、カップルで、グループで、家族でと何回も訪れることが計算されているのでしょう。(年齢を重ねて街歩きはちょっと…となっても、宿のなかだけで楽しめるお宿も多数)

絵になるスポットやイベントも多く、訪れた人がSNSにアップし、それを見た人が来たくなるという好循環も生まれています(娘もそれで草津温泉にあこがれ!)。

私自身、「次にいくなら、共同浴場も利用してみたいなあ……」「ライトアップはまだ見たことがなくて」「この宿に泊まるのもいいなあ…」という「やり残し感」や「関心」、「草津温泉は、どこもきっと楽しい」という信頼がすでに醸成済みです。

チャンスがあれば、「行く! 行く!」となりそうで、草津温泉の街づくりやブランディングの策略にすっかりはまっているのを感じます。

こんな状況の人が、日本全国にたくさんいるんでしょうね。

町民憲章でインナーブランディング

観光地の魅力は、ハード面だけでなく、その土地の人の対応などソフト面からももたらされます。

草津温泉は、地域の方が観光客に親切だという評判も高いのですよね。※我が富山県はそこがちょっと……

私たちもスマホの地図を見ながら「あれ? どっち?」と迷っていたら、地元のマダムが「どこに行きたいの?」と声をかけ、道を教えてくださいました。

こうした町の方の意識の根底には、町民憲章もあるのではないかと拝察します。

草津町の町民憲章はこのようなシンプルなものです。

「歩み入る者にやすらぎを、去りゆく人にしあわせを」

これは、ドイツのローテンブルグ市にあるシュピタール門に刻まれた銘文「PAX INTRANTIBVS SALVS EXEVNTIBVS」を、 東山魁夷が翻訳され、ご厚意で使用することになったものだそう……というストーリーも、ストーリーブランディング的にいいですよね!

観光の町・草津の姿勢を内外に示す、見事なコピーだと思います。

ついでといってはなんですが、我が射水市の市民憲章も見てみました。

申し訳ないことに全く知らなかったのですが、長いうえに解説まで読まないといけなくて、市民に定着するのは難しいかもしれません……。

長期的視点で考えられた戦略を実践

というわけで、草津温泉の楽しさ・魅力の裏側をご紹介しました。

もちろん、この記事で取り上げた事柄は、草津温泉の取り組みのほんの1部で、まだほかにもさまざまな工夫がなされています。

私たちが参考にしたいことは以下のような事柄です。

  • 自分たちにとって何が大切かを確認すること(リゾート開発の波に飲まれず街並み・環境を守った)
  • 自分たちのウリを正しく認識すること(温泉が一番!)
  • ターゲットを明確にする(女性・若者⇒顧客生涯価値UP<何度も訪れてもらう>)
  • 絶えず進化する(街全体での街づくりで、いつも新鮮な楽しみを)
  • その姿が魅力的に伝わるように発信(ブランディング)
  • これら全てを長期的な視点で考える

ブランディングやそれ以前のマーティング戦略など、全体を見ながら作戦を立て、それを地道に実践していきましょう!

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ブランディングやそれ以前のマーティング戦略など、全体を見ながら作戦を立てていきましょう!となったとき、ブランドを作ろうとなったとき、よくぶつかるのが「何がウリ?」「ブランディングってどうしたらいいの?」といった疑問です。

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