インタビュー記事は「話したまま」では「記事」にならない! インタビューからテープ起こし、「記事」の作り方・書き方まで。

インタビュー記事を書いたことはありますか。実はインタビューで聞いたことは、そのままでは記事になりません! 今回は育児情報誌の編集長として未経験のママたちにライター業務をお教えしたときや企業の広報担当者の方向け講習などでお話ししているような内容です。

目次

「話したとおり」書いたらNG!

話した通りならいいじゃない? と思われるかもしれませんが、話したままではダメなんです。

なぜなら、普通、ひとが話す言葉は、そのまま文字起こししただけでは書き言葉として不完全です。

例えば、主述のねじれや語順の乱れ、ら抜き言葉や省略、不確実な固有名詞、ついうっかりの不適切発言、荒っぽい言い回し、意味のない「えー」などが現れます。

「話したまま」は「テープ起こし(文字起こし)」

話したままを文字にすることを「テープ起こし(文字起こし)」といいます。このテープ起こしにも段階があります。

素起こし

発言の内容は、言い直しや言い間違い、「えー」(こういう意味のない言葉を「フィラー」といいます)なども含め、そのまますべてを文字します。

内容を正確に記録する場合や話者の口調や言葉遣いの特徴などを確認するときによい方法です。裁判用やカウンセリング記録など。大学で現代日本語学を専攻していたとき、会話分析には素起こしを使いました。

ケバ取り

発言に出てくる言い直しや言い間違い、「えー」などの余計な言葉はナシで文字にします。「テープ起こし(文字起こし)」というと一般的にはこれを指します。素起こしに比べ、読みやすくなります。

整文

音声を文字に起こすだけではなく、言い回しや語尾を整え、口癖なども修正。冗長な表現はカットし「ですます調」に文章を統一し、明らかな言い間違いを修正し、抜けている助詞や「ら」抜き言葉も補うなど、話し言葉を書き言葉に整えます。話し手の雰囲気などはなくなるため、議事録などに向いています。

編集ルールを決めておく

それから、記事を書く前の準備段階として、ある媒体をつくるときには「編集方針」や「執筆要項」を決めておきます。

これはどういう方針で記事をつくるか、どういった表記、テイストで統一するかなど、記事づくりの方針とルールを明文化したものです。

これを全員が分かっていると、記事のチェックや校閲・校正などを同じ基準で行うため、おのおのの感覚で行う行き違いなどから生じる無駄が減ります。

伝えることに合わせた構成と演出

ここまで読んできて、

では、インタビュー記事は「整文」なんですね。

と思ったあなたは不正解! 

記事として使用できるような文章にするには、さらに「編集」や「演出」が必要です。

まず、記事には全体の主張や読者に伝えたい価値があるはずです。

その伝えたいことに合わせて、構成を立てます。例えば、「最初は自己紹介的に始まり、だんだん深い話で、最後は将来展望」「序盤に出てきた話が最後で回収」…といった流れですね。

その構成に合わせてインタビューで得た情報の順番を入れ替えたり、文字数も考慮しながら、各構成要素のボリュームを考えます。

面白かった話でも雑談や余談はカットして、主題を際立たせる必要もあります。

ライター仲間に聴くと、大抵の方は得た情報の8割はカットするとおっしゃる方が多い印象です。そのままだと無駄な情報、ノイズが多すぎるんですね。

文章表現を整える

また、文章表現も整えます。

1文がいつまでも終わらないのも、口語ならアリでも文章になるとアウトです。

話す順番がアチコチとんだり、話しているうちに別の話になったりすることもありますよね。それを「話された通り書いた」では、読みづらく意味が分からなくなります。

さらに、不正確な用語や人名は確認して正式名称や肩書付きフルネームに変更するのも書き手の仕事です。

取材時に自分に知識が足りなかった事柄は後取材として、話題になった用語を調べて解説となる情報をつけることもあります。※事前にその人の取材された文章や関連作品などにも目を通しておくのも大切。

さらに、インタビューを受ける側にとって不利になる情報もカットするか、書くなら掲載OKか確認します。
打ち解けてつい話した内容や言い回しかもしれず、「言ったから書いたのに」でなく、そこは配慮して編集するところです。

無断で公開された記事内の記述がきっかけで、あとから大問題になったとか、離婚につながったケースなどを見たことがあります。

公開される記事は、他人の人生を変える力があることを自覚し、言葉選びは慎重に行い、怪しいところは相手にも確認を取りましょう。

ただし、「文章表現を整える」と言っても書き言葉によりすぎると、今度は「こんな話し方しないよね」と、インタビュー記事として不自然になってしまいます。

せっかく直接お話したライターとしては、口調や場の雰囲気などを読みにくくならない範囲で、文体や言葉選びに反映させたいところです。ここは「整文」との明確な違いですね。

書き手が理解していることを書く

ぞれから大前提として、「書いている本人が理解できていないことは書かない」があります。

私の経験でも「言った通り書いた」というライターさんに、「ここはどういう意味ですか」と確認すると「分かりませんが、そう言われました」となることが多かった。

それでは、伝わる記事になるわけがないんですよね。書いた本人が、何を伝えたいか分かってないんですから。

分かっていないなら、インタビュイーに質問して確認すればいいのです。

それをしないならアンケートに答えてもらえば十分で、人間が話を聴く必要がなくなってしまいます。

記号や役物の使い方やマスメディアの表記ルール

WEB媒体を含め、団体等の公式な記事として公開される文章を書くときは、役物(文字・数字以外の記号・符号の総称)の使い方など文章の約束事やマスメディアの表記ルールは知っておきたいところです。

例えば、役物の使い方だとこんな感じ。

・『』(二重鉤括弧)。これはか「 」の中にさらに「」を入れたいときや書名などタイトルに使います。

・「…」(三点リーダ)は、会話の間や無言、余韻などを表現。基本的に「……」と2個セットの6点で使用します。

・疑問符(?)や感嘆符(!)の後に全角スペースを空けるのも一般的。これは役物が前後どちらの文に属しているかが明確で、文の区切りが分かりやすくなるからです。

このあたりのお話はこの本が便利。編集や執筆に関わる人なら、手元に置いておきたい1冊です。

ほかにも、常用漢字での表記などの統一ルールは、記者ハンドブックが参考になります。こちらもデスクに常備しています。

参考図書のご紹介

インタビュー記事を含め、書くのが上達するために参考になる書籍を3冊ご紹介します。

まずはライターでない方も含めて、普段の文章がうまくなるための1冊。

こちらはとても易しい表現で文章作成のコツが具体的にご紹介されています。誌面デザインも大変見やすく、初心者の1冊目や上級者の復習によいかと思います。

こちらは私が編集者になったとき、大いにお世話になった1冊です。

それまでも新聞記者やライターなどをしていましたが、大抵の職場は「見てやって学べ」的。体系立てて具体的にノンフィクション記事の作り方を習ったことはありませんでした。

こちらは大先輩ジャーナリストが濃度たっぷり、付きっ切りで指導してくれるような感覚に陥りました。

『嫌われる勇気』で知られるライターの古賀史健氏が、取材して書く手順や書く人が持っておきたい心構えや考え方について、ご自身の考えを述べられています。「教科書」とタイトルにありますがノウハウ本ではなく、こちらは先2冊に比べると、少し哲学的かもしれません。

誰もが編集者でライターの時代

情報化社会となった現代。オウンドメディア(自社媒体)やSNSの発達で、誰もが発信者となり、編集者やライター的な視点とスキルが求められる時代となりました。

また、誰でもパソコンで文字を打てれば、編集者やライターを名乗れる時代にもなりました。

個人としての発信のほか、広報担当や記念誌担当者などに抜擢され、インタビューや記事執筆をする機会がある方もいるでしょう。プロの方法論を知ることで、うっかり事故なく、よい記事、よい媒体が完成するよう応援しています!

もしも「負担が大きい」「一時的な業務だから人を雇うまでもない」「頼んだライターの原稿やディレクターの企画がピンとこない」といった場合は、当社のようなオウンドメディア編集専門サービスに外注するのもオススメですよ!

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