2023年9月3日(日)に新潟県佐渡市で開催された佐渡国際トライアスロン大会のAタイプ(スイム 4.0km、バイク 190km、ラン 42.2km)を完走し、アストロマンになりました! 「ガンガン練習しているイメージもないのに、そんな大会を完走したとは…!?」という驚きのお声もいただいたため、今回は大会にむけた経緯や戦略、練習内容も含めてご紹介。「林原ができるなら、自分もできそう!」と思っていただけると幸いです。
20分の貯金を残してバイクスタート!
スイムを1時間30分07秒(602位)で終え、1回目のトランジション(T1)を予定より早く9分44秒で通過した私。
当初はT1を20分あまりと見て8時のバイクスタートを予定していましたが、7時40分過ぎにはスタートして、予定に対して20分ほどゆとりをもってスタートすることができました。
今回の「佐渡ギリギリ完走計画」の肝は、バイクパートです。
私を含む「男性と混ざって、みんなでライドすると遅い方になる」という程度の女性ロードバイク乗りにとって、佐渡攻略はバイクの制限時間が1番の課題かと思います。
バイク190kmは、スタート関門9時でランスタート関門16時30分。いずれもギリギリで通過するなら7時間30分です。
今回はバイクスタートが7時40分だったので、ランスタート関門を通過するにはバイクを8時間50分で走ればいい計算です。
しかし、佐渡国際トライアスロン参戦ブログをいろいろ見ても、「バイク8時間超えで完走」というレポートは見たことがありません。
多くの参戦レポートはバイク好き男子がバイク5時間台とか6時間台とか、そんな方ばかり。ギリギリ完走の師匠こと「リハビリ先生」でも7時間40分です。
できば8時間以内で戻ってきて、最低でも16時前にはランスタートしたいことろ。それでもランに残された時間は5時間30分ですから、十分とはいえません。
そんな切羽詰まった気持ちで、バイクの長い旅が始まりました。
バイクコースの特徴
佐渡国際トライアスロンのコースの魅力といえば、「バイク」と答える人が多いことでしょう。
佐渡ヶ島をほぼ1周するコースはとっても風光明媚! とくにAタイプでしか走らない北側は荒々しい岸壁や隆起した山々、海から突き出した岩など、自然美が豊かなことで知られます。
反面、北側のコースはカーブや細い道、アップダウンやトンネルが多く、私のようなバイクの取り回しがうまくない選手にとってはスピードが出にくいコースでもあります。
事前に坂道の走り方を習っておいてほんとによかったと思います。
高低差は以下の通りです。
大佐渡が北側、小佐渡が下側です。
大佐渡の山二つは、Z坂と大野亀。ここは前日に自動車で回って見ておきました。
小佐渡の山は、小木坂です。2回上がって下がってもう1回上がります。
よく「Z坂と小木坂はどちらがきついか」と話題になりますが、私の体感では断然、小木坂です。
Z坂は見た目はきつそうですが、足がフレッシュな前半なこともあり、そこまできつくない印象でした。
一方の小木坂は、Bタイプではそこまで辛くありませんでした。
しかし、Aタイプの小木坂は160km走った後です。足の疲労度が違います。
とてもとてもきつく、バイクを降りて押している人も何人か見かけました。
また、風向きは毎年、最後が向かい風になることが多いよう。今年もそうでした。
できることなら、ラスト30kmにゆとりを残しておきたいところです。
一番の強敵。それは関門!
バイクコースの注意点は、トータルの制限時間だけではありません。
コースの途中に、結構細かく関門が設けられています。距離と時刻は以下の通りです。
- 43km 高千AS 10時30分
- 72km 鷲崎AS 11時30分
- 118km 水津AS 13時35分
- 148km 赤泊AS 14時45分
- 161km 小木AS 15時15分
- 169km 羽茂WS 16時15分
- 190km Finish →ランスタート 16時30分
いくらFinishに間に合う力があったとしても、途中で関門にひっかかっては、そこで試合終了です。
スイムが予定どおり8時スタートとしたとき、制限時間と関門に捕まらないギリギリスピードを計算したところ、25km/hとなりました。
すると各関門、AS・WSの通過時間は以下のようになります。
AS・WSの距離と通過目標時刻の表をラミネートしてハンドルにつけておいたのは大正解。
平均25km/hは私にとってけっしてゆっくりではありません。
迫りくる関門にドキドキしながら、何度も何度も表を確認して走ることとなりました。
ちなみに、エイドにはどこも氷入りの水がたらいにたっぷりと用意されており、頭などお願いした場所を冷やしていただくことができました。
佐渡中の氷が集められたのではないかと思うほどでした。ほんとにありがとうございます。
補強食は適量を少しずつ
バイクでは、走りそのものに加えて、補給食についても考えておく必要があります。なぜなら、ランのエネルギー源はバイク中に食べておかないといけないからです。
バイクの補給は、消化吸収のスピードを考慮してとるのがポイント。それ以上食べても、胃腸に負担がかかりすぎ走りのパフォーマンスを落とす原因になるからです。
消化吸収力には個人差がありますが、1時間あたり120~240kcalだとか。そこで私は、1時間に200kcalを目安に補給食をとりました。
まずスタート時には、口当たりの軽い蒸しパンでおやつタイム。
それから、昼頃にはやっぱりお米。
その1時間後には、デザートといことでフルーツ味のジェル。
昼下がりの眠くなりそうなタイミングで、カフェイン入りジェル。
さらに、3時のおやつ。
とまあ、こんな調子。なんとなくコース仕立て。
エイドの補給食がなくなることを心配して、大量にもって走りましたが、最後までおにぎりなどありました。
軽量化を考えると、持参する補給食はもう少し少なくてもよかったかもしれません。
水分補給で熱中症を防ぐ
熱中症予防のカギとなる水分補給については、15 分おきに200ml を目安に1時間800mlに設定。このくらい水分をとると、体温の上昇と脱水を防ぐことができるそうです。
エイドではスポーツドリンク(アクエリアス)のほか、水、コーラがありました。
私はトライアスロン中の水分補給はスポーツドリンク一択です。が、これだけ暑いと後半はコーラも美味しかった……。
バイクに2本つけられるボトルのうち1本は水をもらって、スポーツドリンク甘くて飲みづらいときは薄めつつ飲むようにしました。
また、ボトル1本を水にしておくと、身体にかける水としても役にたちます。
注意することとして、バイク上でボトルをキャッチすると、水分が半分くらいしか入っていないことがよくありました。
自分の希望する量が入っているか、もらったら確認し、足りなければ継ぎ足してもらいましょう。
ちなみに、スタート時のボトルは、スタート後20kmくらいで最初のエイドがあるので、1本でOKかと思います。
また、小木坂では水分を飲んでいる余裕がないので、水は少なくいいでしょう。※それより軽量化がオススメ!
なお、バイクボトルはギリギリレベルの我々がエイドに到着するころ、なくなっていることもありました。
エイドの前にボトルをそのまま使うか捨てていいか表示されます。確認してから捨てるようにしましょう。
なんでこんなに遅いのか??
ここまできたら、あとはこれまでの練習を信じて、「つぶれない強度(心拍数150bptとかそのあたり)で、適切な栄養・水分補給で、一番速いスピードで走り続ける」のみ!
と気合を入れて走りだしましたが、やはり「なんでこんなに遅いのか??」という状態になりました。
出発のフェリー乗り場で「まるで鷹」と恐れたムキムキふくらはぎの男性陣や立派なTTバイクの男性たち、パンパンのお尻や足の女性たちが、私をどんどん追い抜いていきます。
さらに、私よりもっと華奢な女性や、腕をぴんと伸ばしてサドルにどっしりお尻を預けて内またの「ザ・初心者女性!」といった風情の女性も、すいすいと私を抜いていきます。
おまけに、ちょっとした向かい風や上り坂でもスピードがガタっと落ち、また抜かれます。
そこまで辛いわけではないのですが、力を入れてこいでもスピードが上がらないのです。
イメージとしては、古い軽自動車で山の中の登り坂を上がるとき、アクセルをべた踏みしてもスピードは遅くなる……まさにあんな感じです。
バイクが悪いわけではないと思います。ポジションが合っていないか、フォームが悪いか、乗り込みが足りないか、とにかく改善の余地が多いことには間違いありません。
バイクが速かったら、佐渡はもっともっと楽しいんでしょうけど……涙
また後で会いましょう!
「うーん、笑ってしまうくらい遅いわ」
……と自分にあきれながら進んでいましたが、だんだんと私より遅い人が現れてきました。
そう、忘れてはいけません。この大会は暑すぎて開催が危ぶまれていたくらいです。
日が高くなるにつれて、暑くて苦しそうな人や足がつっている人があらわれ、腰などが痛そうな人が次々と落ちてきました。
ひとり抜き、ひとり抜きしていくと、「毒キノコ…」と私が追い抜いた男性がつぶやきました。
振り返ると、トライアスロン仲間の数家直樹さん! さっきから腰が痛そうな後ろ姿を見せていた選手はあなたでしたか?!
数家さんは通常なら、私よりバイクが遅いはずありません。明らかに何等かの不調です。
「大丈夫ですか?」
というものの、私も他の人を気遣うゆとりはなし。
「ひとまずお先に失礼します。また後でお会いしましょうね。でも、無理は禁物ですよ!」
とお声がけし、先を急ぐことにしました。
ギリギリでランスタート関門を突破!
ひとつひとつと関門をクリアしていきますが、20分あった貯金はどんどんなくなっていき、後半は25km/hより遅くなることが増えてきました。
関門の予定通過時間を超えるようになり、関門を通るたびに足切りまでの残り時間が短くなっていきます。
まだ小木坂が残っているのに……と制限時間に間に合わないのでは?という不安も強くなってきました。
しかし、前に進むしか、できることはありません。
それに、気づいたことがあります。
私は足切りギリギリのタイムで走っています。見た目は強そうでもかっこよくも美人でもかわいくもありません。
しかし、それにも関わらず沿道には地元の方々がいて、そんな私に対してもっと応援してくださっているんです。
「おねえさん、かっこいい!」「また佐渡に来てね~」などと、何人もの方が声をかけてくれました。
この暑い中、何時間立って、選手に声をかけたり、手を叩いたりしてくださっているのでしょうか。
それなのに、私が諦めるわけにはいきません。
そんなことを考えながら、小木の坂をよいしょよいしょと登り、海沿いを向かい風にひーひー走り、見覚えのある海岸に戻ってきました。
もう16時を過ぎています。ランスタートに間に合うか…とハラハラしながらトランジションに入りました。
バイクラックはほぼ満車状態です。ヘルメットやグローブを急いで外し、ジェルを口にくわえて飲みながら、シューズを履き替えます。
と、近くにバイクが終わった様子の女性たちが数人、談笑されていました。
「そんなにゆっくりしてて、ランスタートの関門は大丈夫ですか?」
と質問したところ、「何を言うの?」という驚いたお顔で
「リタイアですよ~! あと5時間しかないのに、間に合うわけないじゃないですか!」
とのこと。なんと!もうやめるのね。
「部屋に戻ってシャワーしてからビールね!」のようなお声がキャッキャウフフと聞こえてきます。
それを横目に背中のポケットにジェルを突っ込み、ランニングキャップをかぶり、サングラスをかけて、ランコースへ向かいました。
日焼け止めは塗りなおせなかったけれど、それどころではありません。
トランジションの出口にいる審判員さんに
「まだランはスタートできますか?」
と尋ねたら
「もちろんですよ! がんばって!」
と笑顔で送りだしてくださいました。
太陽はもう傾いてきています。時計を見ると16時20分くらいです。
フィニッシュの時間制限まで、あと5時間10分くらいで42.2km。
フレッシュな足で秋の大会なら、おそらく走り切れると思います。
しかし、バイクで190km走った後の足はすでにがくがく。おまけに、まだけっこう暑い。はたして、フィニッシュできるのでしょう
私が所属するアミノバリューランニングクラブの練習風景や仲間の顔が目に浮かびます。
「フル5時間に恐れをなしては、アミノバリューの名折れだわ……」と気持ちを奮い起こして、足を前に出しました。
バイクは8時間34分24秒で809位。※佐渡トラはT2のタイムをバイク時間に含めます。
通過時の順位は791位。バイクで189人も抜かれていました。とほほ。
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ここだけに掲載している林原りかの「自分史的自己紹介」をお届け後、言葉やブランディングで、ビジネスと人生を充実させるヒントをお伝えしています。返信もOK!