「医療の現場でみてきた女性の心と身体(Npo法人元気やネット・一般社団法人Ponteとやま主催)」で、女性クリニックWe! TOYAMAの代表で産婦人科医の種部恭子さんのお話を伺いました。DVが生まれる背景や親子の関わり方について考えさせられる内容でした
女性の不定愁訴の奥に家庭の問題
演題は「ドメスティック・バイオレン 気づきにくい暴力と支配」。
種部医師が、産婦人科医として女性を診察するなかで見てきた事例と、そこから見えてくる社会や家庭、夫婦が抱えた問題を解説されました。
きっかけは、原因不明の「不定愁訴(ふていしゅうそ)」の患者からじっくり話をきくと、多くがDVや夫婦間のコミュニケーション不全など、家庭内に問題を抱えていることが分かったこと。
「不定愁訴」とは、患者からの「疲労感が取れない」「よく眠れない」といった「なんとなく体調が悪い」という自覚症状の訴えがあるものの、検査をしても原因となる病気が見つからない状態のことです。
種部医師は「不定愁訴」と片付けて患者を帰すことはしない!と決めて診察にあたってきたそうです。
また、若い女性の「望まない妊娠」や児童虐待なども、DVと密接に関係していることが見えてきたそうです。
そんなときも女性の側は「私が悪いせいだ」と自分を責めて、暴力による支配や無責任な性交相手がおかしいことに気づかない状態になっていることが多く、それがさらに暴力や貧困が世代を超えて連鎖していく悲劇につながっていることが伺えました。
行政や民間からの防止策
もちろん、その問題は行政や市民団体などからの把握が徐々に進み、予防や被害者への対策もとられるようになってきました。
例えば富山県では、思いがけない妊娠や経済的な問題などで妊娠・出産に悩む人の相談に、若い世代が使いやすいLINE窓口を解説するなどです。ほかにも、ひとり親家庭の支援等があります。
上のスライドは、「望まない妊娠・貧困・暴力の世代間連鎖」の現象(青い四角)食い止めるための対策(紫丸)を示した図です。
この図で気になったことがありました。
それは、「家庭での教育」から「DV加害者」が生まれる「→」です。
家庭の育児からジェンダーバイアスとDV加害者が生まれる?
ここまでの話を聞く中での疑問が、「配偶者を殴ったり暴言をはいたり精神的に支配したりする人(女性が加害者のことも少数派ながらあり)」「10代の女の子を妊娠させておいて逃げる大人の男(同世代が相手のことは少ない)」など、「加害者」はいったいいつからそんなふうになってしまったのだろうかということです。
「生まれたときはみんな無垢な赤ちゃんだったのに、なんで??」という疑問です。
それを質問したところ、家庭で親から悪意なく刷り込まれるジェンダーバイアスが根っこにはあるのではないかということでした。
「ジェンダーバイアス」とは、社会的・文化的な性差別や偏見を指します。
つまり、以下のような構図です。
親が子に対して「男の子なんだから泣かないの。しっかりしなさい」「女の子はおとなしく、おしとやかにしなさい」といった対応を日々続ける
↓
「男は強くしっかりしていなくてはならない」「女はかわいくおとなしくしていないと愛されない」という考えが、子供に刷り込まれる
↓
「男は偉い『主』である。女はとるに足りない『従』である。」という認識が定着する
↓
「男は女を支配するものである。女は男に支配されて当たり前」が当然となる
↓
女が男の言うことをきかないのはけしからん。舌打ちはもちろん、怒鳴ったり、殴ったりしてもいい(そうされても仕方ない)
……「男の子なんだからしっかりしなさい」が、とんだところに着地しました。
ここで問題なのが、家庭での声がけは非公開。親の責任だということですよね。だから上記図でも、社会的対応を示す紫丸がありません。
「親」があんなにも幅広く悲しい社会問題の出発点となることを知り、責任の大きさを感じました。親がジェンダーバイアスを子供に刷り込むことのこうした弊害を知る機会がほぼなく、親だけに任せていいのか?という気もしています。
また、ジェンダーバイアスは、いわゆる「伝統的家族観」などとセットなのが、厄介なところです。だから、お父さんはちゃぶ台をひっくり返しても、怒られないのです。
私が20代のころ、30代の上司が、自分の転勤に妻と子が同行することについて
「俺が主で嫁さんは従なんだから、当たり前だろ。夫婦は主従関係だろ」
と発言し、女性スタッフが絶句したことがありました。あの方、大丈夫かしら。
なお、我が家は娘ばかり。
「女はかわいくおとなしくしていると愛される」
「女はとるに足りないもの、「従」である。という認識」
「女は男に支配されて当たり前」
といった価値感を植え付けないことで、悪い状態がもたらされそうになったとき
「私はそんなふうに扱われるような人間ではない!」
と声を上げられるよう育てるのが対策でしょうか。
母親として娘を、自分を大切に尊重できるよう導きたいと感じました。
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