大ヒットミュージカル「CATS(キャッツ)」の実写映画版をみてきました。日本公開前には海外で酷評を受けたこの作品。果たして、本当に駄作なのでしょうか。※ストーリー(というほどのストーリーはないのですが)のネタバレを含みます。
大ヒットミュージカル「CATS(キャッツ)」を「レ・ミゼラブル」の監督が実写化
「CATS(キャッツ)」といえば、世界累計観客動員数8100万人を記録した大ヒットミュージカルです。
T・S・エリオットによる詩集『キャッツ – ポッサムおじさんの猫とつき合う法』をもとにつくられました。
ストーリーは、個性的な猫たちがロンドンのごみ捨て場で、踊りと歌のコンテストに参加し、天上で生まれ変わる1匹が選ばれるという単純なもの。
日本では、劇団四季の全身猫メイクが有名ですね。
「レ・ミゼラブル」のトム・フーパーが監督ということで期待? と思いきや、日本よりも前に公開された海外では、「玉ねぎ映画」などの酷評が続き、よくないほうの意味で話題になっています。
映画でも音楽は素敵
ミュージカル「CATS(キャッツ)」の初演は1981年。1983年のトニー賞では、オリジナル楽曲賞を始めとする7部門を受賞。その後も世界中で上演されている名作ミュージカルです。
そんな名作だけあり、音楽は抜群に素敵。特に代表曲「Memory(メモリー)」は、「CATS(キャッツ)」を知らなくても聞いたことがあるという人が多いのではないでしょうか。
映画を見ていて新しい雰囲気を感じた「Beautiful Ghosts」は、テイラー・スウィフトが歌う新曲です。
吹き替えか字幕か
個人的には、字幕版がいいのではないかと思います。
というのは、この映画にはほとんどセリフがありません。全編歌いっぱなしです。
吹き替えにも、Official髭男dismの藤原聡さんなど、そうそうたるメンバーがいらっしゃるのですが……何を言ってるのか聞き取りにくいのです。
……吹き替え版にも、日本語字幕が必要です。
「アラジン」のジーニー役で、ノリノリなのに聞き取れる歌声の山寺宏一さんのすごさを再認識しました。
今回、山寺さんも出演されていますが、歌唱はほぼないんですよね。もったいない。
あと、藤原さんは声とキャラが全くあっていないのも気になります。
というわけで、私は字幕をオススメします。
背景のスケール感は大きい
私は舞台を見たことがありませんが、CGを駆使した場面展開は映画ならでは。
音楽のよさは間違いないので、映画館で楽しむのをオススメしたいですね。
映像の残念なことろも…
猫人間がなんか不気味
この映画は、海外では酷評とのことですが、大きな原因はビジュアル面ではないでしょうか。
まず、主役の猫が予告では伝わらないかもしれませんが…正直不気味。
舞台の場合は、全身タイツと特殊メイクと稽古を重ねた特殊な動きで「人間なのにまるで猫」という感動をもたらすのでしょう。
しかし、毛皮までCGの加工され、しっぽを全員でそろってピンと立てたり、ヌルヌル(という表現がしっくりくるのです!)動く映画ではなんだか「動物実験失敗」のような奇妙さ。
思い出したのはホラー映画の「ザ・フライ」です(笑)。
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しかし、異形のキャラクター映画といえば、「アバター」もありますが、いつのまにか市民権を得ているように…
あの猫人間も、受け入れられる日がくるかもしれません。
ゴキブリケーキがもっと気持ち悪い
その、珍妙な猫人間が残飯を漁り生肉をかじる姿には大きな違和感がありました。
しかしもっときついシーンがありました。
群舞するゴキブリ人間(そう、ゴキブリまで顔が人間なのです。まさに「ザ・フライ」! それも1作目!)をケーキに並べ、さらには1匹また1匹とムシャムシャ食べたシーン!
寒気で鳥肌が立ちました。
ホラーでもないのに、なんですか、この「生理的に無理!」感。予想外の展開です。
大きさはコレでいいの?
猫の大きさはこれでいいのか?とツッコミたくなるところがチラホラ。
私が見ている分には分析できませんでしたが、加工の中途半端なところも残っていたそう。
人間の肉体とダンスの素晴らしさが伝わらない
もっとも、残念だったのがCGが人間の魅力を下げている点です。
このミュージカルの最大の魅力は歌や音楽と並び、ダンサー猫の鍛錬を重ねた結果の体の美しさと最高品質のダンスです。
しかし、この作品は体にもダンスにもCG処理。子猫のビクトリアは扁平胸、セクシー猫のテイラー・スウィフトはビッグな胸をぷるんぷりんと降振って踊ります。
速いステップも高いジャンプも途中から画像加工。なんか不自然。生身の人間の汗が感じないのです。
体や踊りをそのままみせるか、猫のフルCGがよかった気もします。
うーむ、これはむしろ「舞台を見に来て!」というお誘いなのでしょうか。
ストーリーは面白くないわけではないが…
ストーリーがつまらないという批判
ストーリーがない、という批判は仕方がありません。これはダンスと歌を見る作品だからです。
例えば、ミュージカル「コーラスライン」や「シカゴ」などがこういう要素の強い作品ですね。個性豊かな登場人物の自己紹介のナンバーが延々と続きます。
「天上でひとりが生まれ変わる」という話は、きっとオーディションの象徴でしょうが、今の感覚で映画だけみるとカルト宗教っぽくて怖いと感じるかもしれません(中1三女談)。
原作(舞台)と違ういう批判
もともと詩集なので、ストーリーはないそうです。つまり原作はないということ。
ちなみに劇団四季はオリジナル版にないキャラクターやエピソードをたくさん入れているとか。
ストーリーをつけてかえってつまらなくなった?
ただし、ストーリーがないところに映画として成り立たせるため、無理やりストーリーを作ったのは逆効果だったのではないでしょうか。
主役を子猫にしたり、へたれな男の子と恋の予感にドキドキしたり、分かりやすい悪役が登場し最後には降り落ちたりと…そうまるでディズニー映画! その陳腐感は否めません。
このストーリーを盛り込むために、舞台にはあるけど削られたエピソードもあるそうです。
そのせいで、ラストナンバーで「いろんな猫がいて人間に似ているでしょ~♪」と言われても、やぶからぼうに感じられます。
「猫は犬にあらず~♪」もなんのこっちゃです。
若者には共感できない?
ちなみに、一緒にみた中1三女は「話が分からなかった」という感想。ズタボロ猫(娼婦猫ですが、映画では娼婦とはされていませんでした。お子様に合わせてでしょうが、これも設定をわかりにくくしています)がなぜ「メモリー」を歌うのかも、よく分からないと。
「昔は良かったけど、今は落ちぶれ孤独。でも良かった思い出を胸にこの場所で、新しい仲間と生きていこう」
といった経験に子供はいまひとつ共感できないのですね。
「みんな」に推薦はできないがそこまででも
というわけで、見る人をかなり選ぶ映画であることは間違いありません。
ただ、「玉ねぎ」などと酷評されるまででもないかなあと(もっとダメ映画はもっとありそう)。
興味がある方はぜひ。
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