京都では町家を改築したお店をいくつか利用しました。お店によって町家の活かし方が異なり、その建物やお店のもつ「ストーリー」の編集やブランディングについて、興味深く体験させていただきました。
同じ「町家」でも印象はガラリ
私の住む富山では、町家は「狭い」「プライバシーが…」と人気はイマイチだと感じます。
しかし、京都では、町家の特徴をプラスの要素として、住まいや店舗として活かしているのをよく目にしました。
お店を利用してみると、その活かし方もそれぞれ。もとの建物と利用するお店側の個性とを考慮されているのがいいですね。
事例として、対照的なふたつの飲食店をご紹介します。
京都四条くをん
ひとつはキーマカレーうどんの「京都四条くをん」。もともとは呉服屋さんだった建物を利用しているそうです。
HPには以下のように紹介されています。
古木の梁や土壁といった京町屋の趣を残しながらも、現代的なニュアンスを取り入れた洗練の店内空間。木を基調としたインテリアや目になじむ優しい色調でまとめられ、清潔感にあふれています。
1階奥に設けられた坪庭や、2階掘りごたつ席の窓からのぞむ京都の風景など、お食事と合わせて楽しみたい見所が満載です。
店舗2階はこんな感じ。
天井の梁も立派です。
こういう作りは、空調がききづらいでしょうね。クーラーの他にも、送風機がたくさんあったところからも、2階の暑さが大変なのでは?と想像していました。
そうした不便も含めて、町家の魅力ですね。
トイレはちゃんと水洗で清潔かつおしゃれ。ただ、町家らしく、外にでて坪庭をとおって入ります。
雨とか雪の日は寒いですよね、きっと。
ちなみに、お食事はこんな感じ。
カレーうどんと卵ご飯、串天(オプション)という、ボリュームメニューです。
タイム堂
一方、カフェ「タイム堂」は、築100年の町家を改装とありました。が、かなり趣が異なります。
HPによると……
伝統ある京の技と心を現代の暮らしに活かしたい、そんな思いをタイム堂はカタチにしました。
京都御所を見つめて100年余の京町家をモダンにデザイン。
1Fは京で採れた「食」を味わうカフェ、2Fは京で培われた「技」に触れるショップ。
毎日の暮らしに寄り添う〝ちょうど良い“ものを。そして、心に彩りを添える”ちょっと良い“ものを。
これがタイム堂発の新しいスタンダードです。
京文化のエッセンスを心ゆくままに堪能できる場所が、ここにあります。
内装も、言われなければ、もとが町家と気づかないかも今風です。
ところどころの黒い柱が、古い建物の名残なのでしょうか。
こちらもトイレは、いったん外に出てから。
ですが、和風の坪庭ではなく、バイクをディスプレイ。天井はポリ製?の波板で覆い、雨風を防ぐようにしてありました。
いただいたのはモーニングセット。
と、フレンチトーストとベーコンのセットです。
マーケティング戦略が違えばブランディングもいろいろ
同じ「古い京町家」であっても、このように印象の違うリノベのデザインが生まれるのはなぜでしょうか。
それは、利用する店側の「どうありたいか」「どうしたいか」という経営の方針や「何を売りたいか」「誰が対象か」など、マーケティング戦略が違うからです。
くをんさんは、京都四条の繁華街に立地し、私の来店時、お客はほとんどが20~30代の女性のようでした。
「古木の梁や土壁といった京町屋の趣を楽しんで過ごしてほしい」という思いが反映されています。
一方、タイム堂さんの場所は京都御所の向かい。客層は、私がいる間、外国人の方ばかりでした。
「京町家をモダンにデザインし、京文化のエッセンスを心ゆくままに堪能」という思いが生かされています。
ブランディングの観点からは、どちらが正しいというものではなく、目的にふさわしいかどうかが大切です。
いずれのお店も、とても快適で美味しいお店でした。素敵な時間をありがとうございます。
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