私塾・共育和楽塾の合同公開例会(石川・富山・長野)で、「新しい技術が地方を変える」と題した講演を聴きました。テーマは「5G」「人工衛星みちびき」「4K・8K」など、最近よくその名を目にする新技術。これらの技術で、地方がどう変わっていくのかを考えました。
講師は総務省の新田一郎氏
講師は、総務省自治財政局調整課長の新田一郎さんです。
新田さんは、富山県に縁が深く、以前は富山県の知事政策局で局長をされていました。その後、総務省の広報室長を経て、現職についていらっしゃいます。
「総務省自治財政局調整課」とは、何をするところかというと、例えば、新幹線の負担金をどう分配するかの調整とか、心理的にしんどい業務にあたる職員のメンタルケアの調整とか、いろんな「調整」をなさっているそうです。
以下、お話にでできたキーワードについて調べたことを加筆しつつ、講演の内容の一部をご紹介します。
※以下の内容は新田さんのお話そのままの内容ではありません。
「Society 5.0」がやってくる
今回の講演で、まず登場したキーワードが「Society 5.0」です。「Society 5.0」とは、「日本が目指すべき未来社会の姿」として提唱されている新たな社会です。
内閣府のHPでチェックしてみました。
これまでの歴史は、日本では以下のように分けられています。
- 狩猟社会(Society 1.0)
- 農耕社会(Society 2.0)
- 工業社会(Society 3.0)
- 情報社会(Society 4.0)
と捉え、Society 5.0を以下のように定義しています。
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)
この社会に欠かせないのが、今回取り上げられた「5G」「人工衛星みちびき」「4K・8K」および、ロボットなどの新技術です。
移動通信システムの進化
この最近よく耳にする「5G」とは、移動通信システムの世代で5世代目。現在の主流である「4G」の次の世代を指します。
移動通信システムの世代は、1990年代までのアナログ方式「第1世代(1G)」から始まりました。
1990年代に「2G」でデジタル方式となり、パケット通信やメールが登場。
2000年代には「3G」で高速なデータ通信が可能となり、静止画を撮影して送るカメラ付き携帯や動画の視聴が始まりました。
2010年代は、3Gを発展させた規格「4G」に。スマホが登場し、高精細動画も楽しめるようになりました。
そして、2020年代が「5G」の時代です。「5G」は、これまでと何が違うのでしょうか。
第5世代移動通信システム「5G」の特徴
「5G」には、以下のように大きく3つの特徴があります。以下のとおりです。
超高速
現在の100倍の速さで通信ができるようになります。
低遅延
有線でなくても、機器などをリアルタイムで遠隔操作できるようになります。
多接続
たくさんの機器をつないでも通信速度が遅くならないので、家電やセンサーなど、あらゆる機器をネットに接続できるようになります。
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このような特徴からわかるとおり、5GはAIやIoT技術の基盤となる技術です。
例えば、スポーツ観戦であらゆる角度の映像が一気に送信できるようになったり、「スター・ウォーズ」のレイア姫のような3Dホログラムが簡単にできたり、自動運転や遠隔手術ができたり……映画の世界のような、いろんなことができるようになるそうです。
実用化に向けて研究が続けられ、商用サービスは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが見込まれているそうです。
これを聞いて、私は現地観覧よりも映像で、オリンピックを見たくなりました!
自動運転技術に欠かせない人工衛星「みちびき」
カーナビやスマホのMAP機能、ランニングウォッチなどに欠かせない機能にGPSがあります。
GPSとは、「Global Positioning System」 の略。 アメリカが開発した、人工衛星を使って地上にあるものの位置を確認するシステムです。
現在、日本でもアメリカの人工衛星で計測をしており、その精度があまりよくありません。
カーナビで道が1本ずれることって、ときどきありますよね。自動運転を実用化するときは、このずれが大問題です。
この問題を解決するのが、日本の人工衛星「みちびき」です。日本のほぼ真上に、長時間見えるように工夫された軌道を飛ぶため誤差は少なく、新田さんによると数センチ程度とのことです。
肉眼よりもよく見える「4K・8K」の世界
「4K」「8K」とは、現在のテレビのフルハイビジョン(2K)の更に上をいく超高画質の映像です。
画素数が増えるため、大画面でも画質が粗くなりません。また、2Kでは表現できなかった色彩や明暗が出せるようになります。
視聴するには、受信可能な「4Kテレビ」か、外付けチューナーをつけられる「4K対応テレビ」が必要です(オリンピックまでに、テレビを買わないといけないのですね!)。
新田さんがご覧になった印象は「肉眼よりもよく見える」とのこと。
この映像と5Gがあれば、鮮明な画像を見ながらロボットアームで遠隔手術…も現実的な技術だそうです。
最新技術を各社で実験中
上記のような最新技術は、実用化に向けて実験が進められています。例えば以下のようなものがあるそうです。
5G+AI=遠隔制御システム
例えば、AIが指示を出して5Gで伝え、遠くの建設現場で工事。育児中のスタッフが自宅から状況をときどきチェック…という建設現場の管理が可能に。
高層ビル上での作業など、人の集まりにくい業種の人手不足解消につながります。
5G+8K=遠隔診察・ライブビューイング
移動検診車と総合病院を5Gで接続すれば、産婦人科医院のない地域でも、妊婦健診が可能に。事故現場から患者を救急車で病院に運ぶことなく、そのまま手術もできるようになります。
また、多数のカメラの映像を同時に処理できるため、まるでその場にいるような空間を作ることができます。
スポーツ観戦やライブ放映がよりリアルになり、コンサート映像を好きなアイドルの真ん前かぶりつきの疑似体験も可能になるとか。
抽選に落選したファンを集めたライブビューイングがそんな風だったら、うちの娘はチケット買うだろうなあ。
5G+ロボット=災害復旧
有線でなくても操作と動きのタイミングがずれないため、離れた場所から遠隔操作が可能です。
「まちがった線を切ったら爆発」のような、対応者の人命をかけた対応は「全部切る」でOKだとか。
テロ対策も、防御服を着た人間からロボットの役目に変わることでしょう(テロリストもロボットになるのかしら…と不安も)。
5G+8K+AI=高性能防犯カメラ
鮮明な映像の防犯カメラの映像から、人の動きをAIで自動感知。前科のある人がすぐわかるといった機能が付加できるそう。今より防犯性能がよりアップします。
5G+8K+ロボット=疑似観光旅行・テレワーク
分身ロボットを遠隔操作して疑似体験。旅はもちろん、テレワークなどでできることももっと増えます。
5G+超高感度カメラ+新モビリティ=スマホで動かす自動車
ハンドルもアクセルもない小部屋のような自動車です。遠隔操作で動かすこともできるので、免許のない親を会社にいる子供が病院に送り届けることができるようになります。
例えば「高岡駅から新高岡駅を結ぶ未来の自動車」なんてあるかも? これは観光客が増えそうですね。
未来がものすごいことになる
今、行われている実験以外にも、アイデア段階の活用法も多く、これらの新技術から新サービス、新ビジネスがどんどん生まれることが予想されているそうです。
例えば、雪国で高齢者を悩ませる屋根の上の雪下ろしや、里山の害獣駆除、子供の登下校見守りなども、新技術で解決できそうだとか。
さらに5G登場から10年後の2030年、もっとすごい未来像が描かれているそうです。
例えば、年齢や性別・国籍などにかかわらず、多様な価値観やライフスタイルを尊重する「インクルーシブ」分野では、今以上にどこにいても仕事できるようになったり、目や耳が不自由でも言語が異なっても翻訳して意思疎通できるシステムも実現するそう。
バベルの塔に神様が怒って人間の言語をバラバラにしたといわれますが、世界のみんなが意思疎通できるようになったら、どんな世界になるのでしょうね。
そのほか、コンセントや充電器なしでワイヤレス充電が一般的になるとか、完全キャッシュレスとか、全自動農業とか、今は「本当?」と感じてしまうことが、現実化するそうです。
情報発信やPRのツールもこれから大きく変わっていくに違いありません。
AIによる文章作成ツールも登場し始めています。編集や企画のたたき台くらいは、これまでの記事などを参考につくってもらえそうな気がします。動画によるPRもずっと簡単になることでしょう。
そうなると人間には、ネット上に入力されていない1次情報を入手する能力が求められます。足で稼げないライタ-とか0から1を作れない編集者にはつらい時代になりますね。
2030年といえば、私は56歳。こうした技術革新の恩恵は享受できそうです(置いていかれない注意も必要ですが)。
今が子供のときに思いもよらない技術が現実となっているよう(FAXを初めて見たときはびっくりしました)に、今は夢みたいと感じることが実現しているのでしょうね。
ローカル5Gで地方格差を解消
5G関連の技術革新で懸念される問題のひとつは、都市部と地方の格差が広がるのではないかという問題です。
現在の大手通信各社への決まりとしては、
- 2年以内に全都道府県で5Gサービスを開始する
- 5年以内に全国の50%以上の面積で5Gを使えるようにする
となっているそう。
と、いうことは5年後に「地方は県庁周辺だけ使え、大都市でしか使えない」という状況で5Gの普及が終わることも考えられます。
それでは、新しいことをやりたい、おもしろい仕事がしたい、という若者の大都市流出が進むばかりです。都市部と地方の情報格差も、Society 4.0以上に大きくなってしまいます。
そんなことになったら、富山など地方にとって大問題です。
その対応策は…というと、「ローカル5G」という企業や自治体が独自に構築する5Gを活用して、地方を5G化するという方法があるそうです。
5G構築にいくらかかるかなど、詳細はまだ発表されていないということですが、これを進めて格差をなくさないと、地方が本当に終わってしまいます。新田さんがおっしゃる「新技術は地方から」をぜひ!と思います。
ハンデのある人も実力を発揮できる社会に
Society 5.0の到来後の社会について、とくに興味をもったのは、「インクルーシブ」分野です。
私は現在の自分のライフスタイルを実践するにあたり、情報社会(Society 4.0)に進化したことの恩恵を大きく受けてきたと考えています。
例えば、イタリアに生後6ヶ月の長女と旅したときは、当時使われ始めたE-mailのおかげで、子連れ海外旅行に詳しい著者の方やイタリアの宿と直接やりとりをして、旅することができました。
編集者として働き始めたときには、Gmailやクラウド上のストレージの技術がなければ、私が育児と仕事の両方をこなすことは不可能だったでしょう。
情報技術の革新が、職業人にとってはマイナス要素である「母親であるため育児に時間と体をとられる」「農村ぐらしで通勤距離が長い」といったハンデをカバーしてくれました。
さらにSociety 5.0を迎え、地方にも5Gを始めとする新技術が行き渡れば、年齢・性別・障害・居住地域・教育機会の不平等などによるハンデが、労働や行動範囲に及ぼす影響はさらに少なくなっていくのでしょう。
そこには、大きく期待しています。
社会問題を解決して暮らしやすい世の中に
5Gなどの新技術により、「居住地域」「職場」といった「場所」という概念も弱くなることでしょう。
すると、どこにいてもどこの地域とでも関わることができます。そうなれば「人口減→地方衰退」という図式が崩れるかもしれません。移動できる人とできない人の格差も小さくなります。
私が初めてアメリカにホームステイしたときは、実家が恋しくなったとき、「コレクトコールプリーズ」といって交換手に取り次いでもらい、通話料を気にしながら電話していました。
今は、地球の裏とでも、リアルタイムで無料で話せます。
この延長線上の進化が進み、将来、私のもとから羽ばたく子どもたちとは、今のLINE以上に気軽なコミュニケーションが楽しめるのではないでしょうか。
自分自身の将来を考えると暗い気持ちになってしまう介護・医療の人手不足問題なども、解消するかもしれません(外国人の言葉のハンデもなくなりますし)。
こんなふうにいろいろ想像すると、いかにこの技術を活用するかとワクワクしてきます。
もちろん、最先端技術を担う人材の不足や産業の変化による失業者問題(新たな仕事も生まれるでしょうが)、プライバシーは守られるのか、AIの判断ミスや使う人間側がバカで映画「ターミネーター」が描くような未来にならないかとか、不材料もたくさんあります。
しかし多くの人が不安材料も認識した上でそれを回避し、来たるべき超スマート社会の恵みを享受し、もっと自由に自己実現できる世の中が実現することを願います。
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以上、新田さんのお話のキーワードとそれについて調べたこと、考えたことでした。
講演会を企画された共育和楽塾と貴重で難しいテーマを分かりやすく楽しく解説くださった新田さんに、心から感謝いたします。ありがとうございました!
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ここだけに掲載している林原りかの「自分史的自己紹介」をお届け後、言葉やブランディングで、ビジネスと人生を充実させるヒントをお伝えしています。返信もOK!