林原商店の見積もりの中には「編集費」という項目があります。「編集費」とは何をしたことに対する費用なのかを解説します。
編集ってなんだろう
編集とは、画像や文字原稿などの材料を集め、一定の方針にそって書物・雑誌・新聞の形にまとめる仕事です。
編集業務を専門的に行っているのが「編集者」です。ライターの仕事と混同されがちですが、ライターと編集者の仕事は大きく異なります。
ライターもデザイナーもフォトグラファーも、編集者がたてた編集意図に従って、文章を書いたり、デザインしたり、写真をとったりします。
編集者の業務内容
例えば、チラシや冊子などを作るときは、以下のような編集工程があります。これらの業務は編集者が行います(ライターやデザイナーが編集業務を兼務する場合もあります)。
顧客との打ち合わせ
顧客はどのような目的のどんな媒体を必要としてきるかのヒアリング。私の場合は、時にはマーティンマーケティングやブランディングのコンサルティングも行います。
媒体の企画
リーフレット(1枚もの)やパンフレット(複数ページ)、冊子やウェブサイト、雑誌等への広告記事など、どんな媒体を作るのか、紙の種類や厚さ(本来は「重さ」と表現します)はどうするかなど、制作する「媒体仕様を企画」します。
その媒体には、どんな内容のコンテンツを掲載するのかなど、「掲載内容の企画」も立てます。
また、制作に関わるもの共通認識とする「編集方針」を決めます。
さらに、それらを作る際に、デザイナーやライター、フォトグラファー、印刷など必要な業務に対して、誰に依頼するのか適正など考慮して制作スタッフを決めます。
納期的に可能か、費用はいくらかかるかなどを確認して、制作費を見積もります。
制作スケジューリング
制作することが決まったら、取材や原稿執筆、デザインや校正、印刷などの必要な業務を、発刊締め切りに合わせて、無理のないようスケジューリングします。
制作が始まったら、スケジュール通りに進行するよう催促するのも編集者の仕事です(だから、編集者は漫画家の横で、待っているんです)。
取材先リサーチ・選定
企画した記事の内容によって、取材が必要な場合は取材先のリサーチを行い、取材先候補を挙げて顧客に確認します。
取材先のアポとり
取材依頼先が決まったら、取材依頼を行います。その時には、必要に応じて企画書や依頼状を作成し、提出します。
資料整理
記事を書くために資料がたくさんある場合は、資料にナンバリングをしてリスト化するなどして、なくさないよう管理します。
またそれらの資料に目を通し、記事内容の企画に活かしたり、コピーを大胆に渡して執筆の参考にしてもらったりします。
ライター・フォトグラファーとの日程調整
取材時に同行する、ライターやフォトグラファーの日程を抑え、取材日時を確定します。
デザインのラフづくり
制作する媒体の大まかなラフデザインを作ります。このラフは、デザイナーがデザインするもとになります。
必要な素材の割り出し
デザインのラフから、どのような写真が何枚必要か、イラストの制作は必要か、見出しの数、本部の文字数など、必要な素材の分量を見積もります。
写真撮影時のフォトグラファーへの指示出し
写真撮影をするときは、フォトグラファーが自分好みで勝手に撮影するわけではありません。
編集者が、どんな構図や雰囲気の写真が欲しいかをフォトグラファーに伝え、「この写真で OK」 という許可を出します。
例えば、お料理の写真を撮る時、奥をぼかす撮り方がありますよね。もし、その写真を切り抜きで使いたいなら、奥までピントが合っている必要があります。
編集者は写真の用途に合わせて、撮影の指示を出します。
取材時のライターへ指示出し
同じくライターも、自分好みで自由に文章を書くわけではありません。
媒体に掲載できる文字数は何文字か、読み手はどんな予備知識や語彙を持っているのか、固めの文章かくだけた文章か、何に焦点に当てるのかなど、どのような文章が必要かを、編集者がライターに指示します。
写真の確認
フォトグラファーから納品された写真が、要望を満たしているか確認します。
ライターの原稿確認と修正指示またはリライト
ライターから納品された原稿が、要望を満たしているか、わかりやすいかなどを確認します。
要望を満たしていないあるいは分かりにくい場合は、ライターに修正依頼を出したり、編集者がリライトしたりします。
校閲者・校正者への校閲・校正依頼
文書の記載事項に誤りがないか、誤字脱字がないかなどを、 校閲者・校正者に確認してもらいます。
ここで真っ赤(修正だらけ)になって帰ってくることもあるので油断なりません。
写真選考
撮影された写真の中からどの写真を使用するかを決めます。
デザイナーへの指示出し
デザイナーにデザインを依頼します。
この時はラフを元に、どの素材をどの程度目立たせたいか、読み手の属性や好みをもとにデザインの条件を指示したり、どのような素材(発色がいいか、色が沈むかなど)に印刷するのかを伝えて色選びに反映させてもらったりします。
デザイン案への修正指示
デザイン案ができたら、要望を満たしているかのチェックをします。
デザインが美しく整っていることはもちろん、必要な素材が全て使われているか、テイストが目的に合致してかるかなどをチェックします。
読み手にとって読みやすいかなどもチェックポイントです。
例えば、若いデザイナーが大きなモニターでデザインしていると、本文の文字が小さくなったり、薄い色文字を使いがちです。
ご高齢の方が対象の場合は、文字を大きくする、色を濃くするなど修正してもらいます。
顧客や取材先への校正紙の確認
校正紙とは、校正するために印刷した用紙です。
顧客や取材先、内容によっては専門家などに校正紙を見てもらい、間違いがないかを確認します。
各所からの修正指示のとりまとめと デザイナーへの修正指示
確認済みの校正紙が戻ってきたら、各所からの修正指示を取りまとめて一本化し、デザイナーに修正の依頼を出します。
印刷会社への印刷指示
印刷会社に印刷データを渡し、印刷の依頼をします。必要に応じて、色校正(印刷所が出す校正紙で色味を確認する)を行います。
印刷後の検品
印刷された媒体が納品されたら、検品を行います。
乱丁落丁(ページが乱れたり、ページの抜けたり)がないか、版ズレ(印刷する時に各色の版がずれていないか)がないか、糊付や裁断などの製本は綺麗に行われているかなどを確認します。
顧客への納品手配
完成した媒体を納品先へ発送手配します。お客様のところにお納めすることもあれば、封書でお送りするなど、様々な発送手配がありますね。
記念誌や自費出版などで、謹呈紙(「謹呈」と書いた短冊。普通は本扉ページの前に挟み込みます)がある場合は、並行して制作します。
印刷会社で挟むのか、別に納品して必要な冊数だけ顧客が自分で挟むのかも確認が必要です。
顧客への請求と各所への支払い
顧客から制作費をいただき、ライターらに支払います。
編集の手間は結構かかる
つまり編集業務とは、ライターとかフォトグラファーといったような専門家が受け持たない仕事全般を指します。
一つの媒体を作る時には、見ていただいてお分かりいただけたように、こういった編集業務が案外たくさんあります。時間も結構かかります。
そこで、原稿料やデザイン料、撮影費、印刷費などとは別に、編集者の担当業務に対する「編集費」という料金も発生するというわけです。
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