私はお仕事をお引き受けするとき、前払いを基本的にお願いしています。その理由はシンプル。払わない人がいるからです。
【ラーメン屋さんの券売機】
入店時には見分けられない食い逃げ犯
善良な方々には想像もつかないと思いますが、世の中にはフリーランスに仕事を頼んで、お金を払わない方がいます。
フリーランス仲間からそうした話はしばしば聞きますし、私も経験しています。
支払っていただけなかった事例は、通常どおり、見積もりや構成案、デザイン案など確認いて了承いただいて進めました。
その後、制作がある程度進んだところで、「気持ちが変わった」と全く違う仕様、デザインのものを作りたいとなり、最後は「求めるレベルでない」と支払いを拒否されました。
だからといって、デザイナーら外注先に私が支払わないわけには行かないので、2パターンの制作費は私の持ち出しとなりました。
このお客さまが普段からアブナイ感じがするかというと、そうでもありません。私がわるかったのかと反省もしましたが、私以外のデザイナーも同じ方からの未払いを経験していました。
食い逃げのように、同じやり方を繰り返していらしたんですね。
回収コストがもったいない
先のような事例では、「督促する」「訴える」という対処が考えられます。
でも、それはできるだけ避けたいところ。その時間と手間と費用がもったいないからです。
また、狭い田舎で「支払いトラブルが多い」という評判は、たとえこちらが督促するがわでも嫌なものです。
「サービス」は返品できない
未払いが特に問題なのは、商品と違ってサービスの場合は、「支払わないなら、返してください」ができないからです。
商品にのなかでも「ホームページ」「書籍」「オーダーメイドスーツ」など、「作る手間とスキル」でオーダーメイド商品の場合も、同様に「では返品」というわけにいきません。
支払われない場合は、完全にタダ働きになってしまいます。
前払いを嫌がるクライアントはいるか
このような食い逃げを完全に防ぐには、全員に入店時にお支払いいただけばいいのです。というわけで、前払い制です。
とはいえ、前払いは慣例として珍しい業界もあります。私が属する出版やライティング、デザイン業界は、前払いどころか、サービスの報酬さえ伝えずに、プロジェクトがはじまることも珍しくありません。
この場合、価格ぎめの主導権は完全に依頼主側となり、仕事が終わってから根切り交渉が始まることもあります。
このトラブルや、やり取りの手間と時間がまたもったいない。
そこで、私は先に価格を提示して、基本的に前払いをお願いしています。
もしかすると、前払いを申し出ると相手に嫌がられ、仕事がこなくなるのでは?と心配になる方もいるかもしれません。
結論から言うと、いらっしゃいました。
ただ、「後払いだから」というのが、選ばれた理由でいいのでしょうか。
その方からの仕事は、受けなくてむしろ良かったと思っています。
「じゃあ、適当に書いたものを出してくれる? それ見て決めるから」
と言い放つ方でしたので、受注したとしても適当にあしらわれて、大変だったと予想します。
「前払いお願いします」は、支払いトラブルが発生しそうなお客を見分けるリトマス試験紙となります。
仕事を受ける前に信頼してもらう
前払いを嫌がる側の心理としては、食い逃げ的確信犯以外に、以下のような理由があります。
- 仕事を完了してもらえるか心配
- 仕事の質が心配
これは確かにもっともなことです。
そこで、ご心配をさけるため、受注前に信用していただく努力が必要です。そのための努力が、SNSやこういったブログでを通じて、考えかたや実績、お客様の声などを紹介する情報発信です。
情報をチェックしてから依頼する方は、だれでもいいわけではなく、その人を「選んで」依頼してくださっています。
その選んだ相手に前払いすることに抵抗感は低いですし、事前にそこまで手間とお金をかけて始めたプロジェクトは、お客様の覚悟が違います。途中で立ち消えたり、支払いなしということが起こりません。
メニューに書いておく
「前払いがいいとわかっていても言いにくい」という方は、書いておくのがオススメ。ホームページやブログのメニューや価格に「前払をお願いしております」と書いておくだけでOKです。
受注や見積もり前に「前払をお願いしておりますが、見ていただいてますか」と確認して、仕事が始まる前に請求書をお送りしましょう。
前払いのサービスはたくさんある
世の中に前払いのサービスはたくさんあります。
飲食店で入り口に「当方は前払い式です」と書いてあっても、怒るひとはいません。美術館も映画も演劇も、電車も飛行機も、大学の授業料もツアー代金も前払いです。
フリーランスが前払いでいただくのを責められる理由はありませんよね。
ただし、前払いはクライアント側にリスクをとっていただくこと。感謝の気持ちを忘れずに、全力で働きましょう。
メルマガ登録はこちらから
ここだけに掲載している林原りかの「自分史的自己紹介」をお届け後、言葉やブランディングで、ビジネスと人生を充実させるヒントをお伝えしています。返信もOK!