【映画レビュー・ネタバレ注意】成功物語「アリー/スター誕生」に込められた依存症への警告とメッセージ

今年2本目の映画は、「アリー/スター誕生」です。レディー・ガガ主演で、その楽曲の素晴らしさが話題です。ただ、楽曲と主人公の成功と恋のストーリーを楽しみにして見に行った私には予想外の、みぞおちにふいにパンチを食らったような作品でした。

画像引用 Amazon

目次

話題のレディー・ガガ初主演映画

「アリー/スター誕生」は、レディー・ガガの初主演映画です。アカデミー賞受賞も噂される話題作です。

自分に自信のない歌手志望の女性・アリーが、大物シンガーであるジャクソンのと出会って恋に落ちたことをきっかけに、成功の階段を上っていく物語です。

※以降はネタバレを含みます。

ガガもいいけどクーパーに釘付け

映画そのものはとてもいい作品でした。

アリーを演じるレディ・ガガの歌声はもう圧巻の大迫力。ガガの歌はやっぱりいいなあと再認識しました。サントラ欲しいです。

アリー/ スター誕生 サウンドトラック [Explicit]

不満をあえて揚げるとしたら、ジャクソンがアリーに惚れ込むのも、スターになるのもあまりにもトントン拍子で、アリーに共感しづらいことです。ジャクソンとつくった音楽性を捨てて、髪型や衣装を変えるあたりの葛藤もないですし……。

突然出会ったり、寝顔を眺めるシーンやホテルでの後朝の朝食などを経ながら成功者の男性が、自信のない若い女性に惹かれていくくだりは映画「プリティ・ウーマン」を彷彿としますが、「プリティ~」のほうが納得感がありました。

その違いはなにかと考えると、やはりガガの貫禄でしょうか。

すっぴんでもTシャツに短パンでも、小娘感ゼロ。滲み出すオーラは隠しきれません。終盤はガガそのまんまという感じでしたね。

一方で、ジャクソンを演じたブラッドリー・クーパーは、違和感なく素晴らしい。

ワイルドなルックス、低音のボイスが好みにドンピシャだったこともありますが、落ちていく男の繊細な演技が本当によかった。監督・脚本・制作・出演をこなし、歌手ではないのにガガと対等(むしろリードしている感じで)に歌う多才ぶりにも感服しました。

『依存症』を体験者がリアルに描く

私のストーリーへの前知識は「恋人が死ぬ話」という程度。分かりやすい感動映画かと思っていました。

物語に始まりは、惹かれ合う二人がイチャイチャしたり、デュエットしたり、微笑ましい限り。でしたが、物語には次第に、暗雲が立ち込めてきます。

アリーの成功の影で、ジャクソンは持病である難聴の悪化、アルコール依存症だった父を巡る兄との確執、アリーへの嫉妬も相まって、アルコール依存さらにドラッグ依存症に陥っていきました。

私はこんなストーリーでしたかと、うろたえました。というのは、私も以前、夫がアルコール依存症を患ったことがあるからです。
ジャクソンを演じ、監督と脚本を勤めたブラッドリー・クーパー自身もアルコール依存症の経験者というだけあり、アルコールとドラッグに落ちていき、最終先には最悪の選択を選ぶジャクソン様子が、娯楽映画として成り立つ範囲で丁寧にリアルに描かれます。

例えば、依存症が発覚して入院中のジャクソンと見舞いに訪れたアリーとの会話は、そのまま交わしたことがあります。ジャクソンのさまざまなしくじりや「これで最後よ」という迎えの場でのセリフも、経験者にはアルアルではないでしょうか。

私にとっては、見ている間とても苦しく、実のところ、ストーリーや歌を楽しみ切ることができませんでした。その夜はフラッシュバックで夜中に目が冷めて、それからは眠れませんでした……。

冒頭で書いた「みぞおちにふいにパンチ」とはこのことです。依存症や自死の当事者や関係者の方が鑑賞の際は、ご自身の状態にあわせて注意していただくとよいかと思います。

依存症患者の周りの人へのメッセージ

ジャクソン亡き後、自分を責めるアリーに、ジャクソンの兄・ボビーから「お前は悪くない。俺が悪いわけでもない。悪いのはあいつだ」という言葉がかけられるシーンがあります。

夫が依存症になったり自死したりすると、妻は自分で自分を責め、周りからも「あなた(妻)が~だからこうなった」と責められることがよくあります。

そうした現状に対する監督・脚本のブラッドリー・クーパーからの「パートナーのせいではなく、本人以外は責められるべきではない」とのメッセージが感じられたシーンでした。

不調・不具合は専門家に相談しよう

ストーリーから得た教訓は「不調・不具合は専門家に相談し、適切なサポートを受けよう」ということです。

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ジャクソンが抱えていた難聴や、アルコール依存症の親もとで育ったゆえの心の不調も、アルコールや薬物への依存症も、専門家が適切にサポートしていたら…と思います。

また、プロデュース業に専念するなど難聴でもできることのなかに活躍の場をみつけたり、ブラッドリー・クーパー自身のようにアルコール依存症経験を芸に活かしたりしてほしかったと思います。

ドラマティックではないかもしれませんし、アリーとはその後も苦しい関係だったと思いますが、生きていればこそやり直しはきくと思うんです。

苦しいときは、周りのひとに話しましょう。聞いてくれる相手が思いつかないなら、コーチやカウンセラーなどプロに頼むのも方法です。

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